
光と影、ハレとケ、正義と悪の比喩表現のようにも聞こえますが建築にとっては最重要項目です。
もしも建築がただの箱だとしたら中に入ると真っ暗で何も見えず、生活どころか身動きも出来ない状態になるでしょう。そこへ壁に穴を開けて光を得ることで建築の中でも外と同じように視界が確保され動き回ることができるようになります。そしてその穴を開ける位置によって室内の明るさに差が出てくることに気づきます。穴の大きさが大きい程、高い位置にある程、室内は明るくなります。そして方位によっても時間や季節とともに変化があります。
ただ明かるさを得るというだけではなくその開口部の位置や大きさ数を操作することで光と影の芸術的な美しさを見出す建築も数多くあります。
アントニ・ガウディ、ル・コルビュジエ、フランク・ロイド・ライト、ルイス・カーン、丹下健三、安藤忠雄等々。
建築関係者に限らずその名を聞いたことのある数々の有名建築家達はもれなく光と陰を巧みに操る建築作品を残しています。
光と陰を操ってこそ一流の建築家です。
教会建築に多いですが光と陰のコントラストによって明暗の強弱を視覚に訴えかけてくることで神秘性を体現しています。暗がりの中に差し込む光はまさに神を想起させます。光の教会(安藤忠雄)や東京カテドラル聖マリア大聖堂(丹下健三)、ロンシャン礼拝堂(ル・コルビュジエ)などはその代表的な建築です。
影の中に光が差し込むリズム感や影が描くグラデーションは人々を魅了してきました。
また、日本人には侘び寂びという美意識があり、数寄屋建築や茶室が文化財として保存されています。
下の写真は織田有楽斎(織田信長の弟)によって建てられた如庵(三大茶室の一つ)。障子ごしの柔らかくほのかな光によって侘び寂びの美的感覚を醸し出しています。静寂の中で木々の揺らめく音や雨音なども趣きとして感じられます。

建築界では光と影についてはいくら時間があっても語りつくせません。
ある日の娘が家の中で光の産物を発見しました。
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そして一言。
「Youtube出てきたっ!」

壁面に現れたのは神々しい光でもなく、慎ましやかな柔らかく淡い光と影の産物でもなく
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思わずポチッと押してみたい衝動に駆られます。
巨匠と呼ばれるには程遠いな…
と神々しい三角を眺めながらしみじみ思うのでした。