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廊下

江戸時代の農家住宅には廊下はありませんでした。いわゆる田の字型で部屋同士がくっついていて襖で隔てられているだけでした。今では部屋と部屋は壁で仕切られていて廊下によってつながっています。
枝と葉っぱみたいなものですね。植物では枝は水の通り道であり葉で光合成によって作られた養分で生きています。枝は葉と葉をつないで一本の木の外形を作っています。枝ぶりによってその木そのものの形が変化していきます。

建物の中で廊下は人と物、空気、音の通り道です。これらを家の隅々までつなぐのが廊下の役割です。

基本的には動線となる廊下は短い方が移動が少なくて済み、余計な時間がかからなくて良いです。そして廊下が短けばその分建物の面積も小さくてすむため建築費も安くなります。しかし実際は昔の農家のように部屋と部屋を直接行き来できるようにしたとしても、その部屋の中で人が通りぬけるためのスペースを確保しないといけません。するとその通路分は部屋として使えないスペースができてしまいます。一見廊下がないように見える間取りでも仮想廊下のスペースは必要になるので家具配置や使い方は制限されるため注意が必要です。

その通路は廊下として格をあげるのか、それとも通路として部屋の一部に組み込んでしまうのかはその部屋の使われ方やプライバシーの度合いによって使い分けをします。

廊下といへば動線にしても面積の制約の面からしても何かと嫌われ役のように思えますが、旅館のように畳敷きの廊下はいかにも格式高く憧れますし、廊下に収納を設けたらり、外が眺められる窓を設けたり、はたまた庭先に腰掛けられる縁側も廊下の一部です。このように通路+αの何かを与えることで単なる単調な通り道を建物内の魅力的な部分に昇格させてあげることもできるのではないかと思います。

廊下によって建物のタイプ分けがなされていることもあるので紹介しておきます。

両側に部屋がある場合は「中廊下」と呼ばれ各部屋へ効率よくアクセスできます。逆に片側にだけ部屋と繋がっている場合は「片廊下」と呼ばれ中廊下よりも明るい廊下にできます。アパートやマンションの計画の際に廊下形式としてこれらの呼び方で使われています。